映画レビュー

遠藤周作原作『沈黙』宗教とはなにか?神は何故応えないのか?死ぬ瞬間に人は誰を選ぶのか?

『神』の沈黙に苦悩する

沈黙 -サイレンスが、2016年12月23日アメリカで日本に先行してクリスマス直前に公開された事実がこの映画の重要性を物語っています。

日本公開は2017年1月21日でした。

私が思うに、明らかにキリスト教世界は苦悩し続けています。

ローマカトリック成立に原因があると思います。

そのことを残虐なまでの描写と音楽を殆ど入れず静寂な中に進んでいく物語で表現しています。

宗教に何らかの悩みをお持ちの方はご覧になると良いと思います。

結論はアメリカ的な穏やかさです。

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ダヴィンチ・コードでも述べましたが、イエスを『愛の伝道師』ではなく『救世主としての神』に祭り上げてしまったことに起因しています。

ローマの支配目的での宗教利用が『絶対的存在の神』を必要としてしまった悲劇だと私は思っています。

以前どこかで書いた事があります。

[box class="glay_box"]私は、何かが起こると『神に祈る人々』と現場へ行って『ボランティアをする人・救護する人』たちとでは、『どちらがより大切な人に寄り添っているのですか?』という疑問という名の宗教団体批判をしました。[/box]

その気持ちは今でも微塵も変わりません。

元々宗教が嫌いになった原因です。

今は宗教を尊重していて、宗教団体が嫌いなんだという認識に変わりました。

『神は何もしてくれない』のか?

遠藤周作さんの表現では、『なぜ神は沈黙しているのか?』になります。

真剣に『神』に向き合ったことがあれば、当然出てくる疑問だと思います。

盲目的に指導者の言葉に従う人達にはこの疑問は湧かないのでしょうか?

遠藤周作さんは、狐狸庵先生と親しまれユーモアのある随筆もたくさん書かれています。

しかし、ご自身がカトリックであったことからなのでしょうが、終戦後直ぐ(1950年)にヨーロッパに留学されています。

まだナチスドイツの惨劇の痕跡が多数残るヨーロッパでの経験からでしょうか、宗教と人間をテーマにされた作品を多く書かれてもいます。

何点か読んでいますが、取材の丁寧さと描写の緻密さが際だっていました。

『沈黙』でノーベル文学賞の候補にもなっていました。

この映画は『宣教』の話では無く、『棄教』がテーマです。

もちろん、キリスト教会にとっての立場です。

宗教に対する日本人の対応が丁寧に描かれています。

時には、暴力的に

時には、懐柔策をもって

日本人としての本音が出ているのも驚きです。

監督や脚本家が遠藤周作原作の『沈黙』を熟読されたことがうかがえます。

宣教師が全て善意だったという世迷い言は絶対に聞きません。

この時代の宣教師は侵略者の手先である事実は消え去ることがありません。

島原の乱において、あれほどの抵抗をした人達が信じた宣教師や商人たちが、日本人を海外へ、しかもあり得ないほどの多数売り飛ばしていた事実があります。

カトリックはヨーロッパで最後まで奴隷を使役していました。

自分たちは働かないので下男としての奴隷が必要だったからです。

奴隷に対して何の『愛』もありませんでした。

物語にも出てきますが、黄色人種は野獣と同じなのです。

なんとか人間らしくしてあげるために布教するという考えで日本へ来ています。

つまり、キリスト教へ帰依しない日本人は野獣と同じ扱いなのです。

さらには、島原の乱では大量の鉄砲と弾薬が一揆勢側で使われています。

鉄砲は日本で作れましたが、当時は日本に火薬が無く、奴隷と交換でしか手に入りませんでした。

日本人には奴隷の概念が無く、年季奉公のつもりで海外へ送り出されていきました。

しかし、二度と戻ってこれない性奴隷が実態でした。

当然、一揆勢の武器弾薬購入のために、クリスチャンになっていた女性も送り出されていました。

これも自己犠牲なのですか?

遠藤周作さんは カトリック教徒として醜い宣教師の実態を描けなかったのでしょう。

商人の仕業だと思っていたのかもしれません。

アメリカ大陸に連れて行かれた奴隷たちに何の加護もしなかった宣教師たち。

日本から連れ出された大勢の、中にはクリスチャンになっていた女性を性奴隷にしているのを知っていながら何の加護も与えなかった宣教師たち。

たくさんのお金がローマカトリックに渡ったことでしょう。

これもカトリックへの貢献ですか?

欧米の人達は宗教が生活に浸透しています。

だからなおさら、宗教について深慮する人が多いのでしょう。

この映画のテーマ『沈黙』が、いかに欧米の人を苦しめているのか!

アメリカの映画には宗教に対する苦悩で溢れている作品が多い気がします。

最後までお読み頂きましてありがとうございました。

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